− 夏色模様 −
こんな危険地帯。 のこのこやってきて、ケガでもしたらどうするんだ?
そりゃ……。 俺らの不注意で、背後からボールを当ててしまうかもしれない。
でもさ…… 雰囲気とか、空気の流れでそういうのって分かるんじゃねーの?
「まお、前にも言ったろ? この先、お前だって社会人になるんだ。 そうなった時、いつも俺や愛川のような存在がいるとは限らない。 だから、今のうちから慣れとけ」
「うん…… そうだね」
おいおい……。 信じらんねーし。
普通、耳の聞こえない人をこんな危険と隣り合わせのような場所に放り込むか?
俺なら、絶対やらない。
前田先輩だって、木下先輩が好きなら大切にしてやればいいじゃん。 “危ない”って分かっているなら、連れてこなきゃいいのに。
「そろそろ、戻るか? …… 旅館」
「ううん、もうちょっとだけ…… こうしていて」