− 夏色模様 −
“こうしていて”って……。 一体二人は何をやっているんだ?
二人が何をやっているのか気になり、俺は入り口からゆっくり顔を出した。
「ねぇ、帰り。 海、寄っていかない?」
「見るだけだからな」
「うんっ」
会話だけなら、よかった。 よかったよ……。
ただ、本当に仲が良いだけって言葉も信じられたけど。
「ギュッて、して?」
「甘ったれ」
ゴール下の壁に背を預けて座る前田先輩が両膝を立てている。 そして、その間に木下先輩がすわっている。
今は、木下先輩の要望で前田先輩の腕が木下先輩の腹周りに回っている。
「――― ッッ」
唇を強く噛み締める。
前田先輩は“彼女はいない―――” そう言った。
でも“好きなヤツいるから” って、言っていた。
でも、二人のこんな姿をみたら…… “二人は、付き合っているんじゃないか―――”
そう、疑ってしまう。
これ以上、体育館に残る二人を見たくも無く…… 声も聞きたくなかったから。
音を立てずに、体育館を後にした。