− 夏色模様 −
向かうは、自販機。 お茶でも買おうかと思い…… ペタペタ床を鳴らしながら歩く。
「前田くんって……」
ったく、どうして俺の行く先に“前田先輩”はいるんだよ。
前田先輩がいたら、気になって――― 立ち聞きしちまうし。
「前田くんって……。 まおが好き?」
一緒にいるのは愛川先輩か。
前田先輩と、愛川先輩。
なんだか珍しい組み合わせだ。
「好きだよ」
前田先輩か、即答した。
「――― ッッ」
俺の胸は、わしづかみにされたように痛む。
「そっか……。 あたしも好きだよ」
なんだよっ。 前田先輩は、やっぱり木下先輩が好きなんじゃねーかっ。
木下先輩は木下先輩で、前田先輩が好きみたいだし……。
俺の入る隙なんて、あるのか?
なんか…… すげー、ムカつく。