− 夏色模様 −
「えー、いいじゃないですか! だって、夜中……。
前田先輩と愛川先輩は、ロビーで二人でいたじゃないですか!
二人で仲良く座ったりして、話していたんだから俺らだってそれくらいしても良いんじゃないんですか?」
俺の口は、止まることを知らない。
「前田先輩と愛川先輩って、付き合っているんですよね?
昨日、二人で“――― 好き”って、言っていましたもんね」
違う。 昨夜の“――― 好き”は、木下先輩に向けて言ったもの。
愛川先輩と前田先輩がお互いに向けて言った言葉じゃない―――。 そう解っていたはずなのに……。
口を止めることが出来なかった。
全てを言い終わった後、深い後悔に襲われた。
でも、俺があんな事を言ったのに、前田先輩は動揺すらしない。
「あぁ、言ったよ。 “――― 好き”だってな」