− 夏色模様 −
「雄飛……」
「捺稀、か」
足音も立てずに近づくなよっ。 驚くだろ?
「なんだよっ……」
「俺も自主練」
それだけ言って、捺稀は俺の隣に座った。
コイツ…… 絶対バカだ。 “自主練”とか言って、ボール持ってないし……。
少しだけ、冷静に捺稀を観察できた自分に笑いが込み上げて来る。
「ハハッ」
それは、広い体育館にやけに大きく響いた―――。
「俺さ…… バカなことしたんだ」
ただ、独り言のように話しはじめる。
木下先輩にしたこと。
前田先輩にしたこと。
全部、全部…… 捺稀に話した。
「なぁ、捺稀……」
「ん、どーした?」
「俺さ…… マジで木下先輩。 好きだった」
「知ってるし」
そっか。 そうだよな。 捺稀は、俺の近くで誰よりもそれを見ていたんだ。