− 夏色模様 −




小さい姿でも確認できた時は、マジで嬉しくて…… 飛び上がったこともある。


授業中。 グラウンドに目を向けると、木下先輩が体育で走っている姿に目を奪われて、毎週怒られたりもした。

…… そう、本当に好きでしょうがなかった。


「でも、木下先輩。 耳、聞こえないんだって」


「――― !!」


これは捺稀にしたら、初耳だったらしく大きな反応を見せた。


「どっちの耳かは知らねーけど、聞こえないんだと」


これを聞いた瞬間。 俺は一瞬だけ、木下先輩への想いが熱を引いた気がした。


“耳が聞こえない = 障害者”


こんな方程式が成り立った。


「雄飛は、どうするんだ?」


「どうすっか……」


“木下先輩が好きか?” そう問われると“好き”

答えは決まっている。


でも、頭の片隅で“耳が聞こえない”

こんなことが、頭を過ぎる。




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