− 夏色模様 −




「でも、桐谷先輩って……。 木下先輩は“まおちゃん”って……。 呼びますよね?」


確かに……。 言われてみたらそうだ。


桐谷は……。 まおを“まおちゃん”って呼んでいる。

それも、今まで不思議には思わなかった。



「木下先輩は木下先輩で、桐谷先輩を“陽太くん”って、名前で呼んでますよ」


西村くんのその、余裕そうな表情が……。 あたしを不安な渦に巻き込む。


もう―――。 辞めてっ。

それ以上、まおと桐谷の事を聞きたくない。


「桐谷先輩って、本当に愛川先輩が好きなんですか?」


聞きたくなかった、その言葉。

桐谷はあたしを本当に好きなのか……。 不安になる。



「木下先輩って、桐谷先輩と前田先輩。 本当はどっちが好きなのか、わからないですよ?」


まおは……。 桐谷を“陽太くん”と呼んで、前田くんを“いっくん”と呼んでいる。




< 24 / 300 >

この作品をシェア

pagetop