− 夏色模様 −




本当に、誰だってそうなんだろうか?

友達――― 自分の好きな人が、自分の声を聞き取ってもらえないんだぞ!


そんな現実を簡単に受け入れられるヤツなんて…… 本当にいるんかよ。


「なあ、捺稀。 俺、正直…… 木下先輩に会うのが怖い」


ひどいことも言った。 でも、俺の声を聞き取ってもらえないんじゃないか――― そんな不安がある。


「俺…… どうしたらいいんだよっ」


木下先輩は好きだ。 それは、今も変わらぬ想い。

でも“好き”には、二通りの意味がある。


恋愛感情の“好き”

先輩としての“好き”


木下先輩の耳のことを知る前は、確実に前者であった。

だか、しかし…… 耳のことを知った今。

俺の本当の気持ちは“前者”なのか…… それとも“後者”なのか……。



「――― っくそ!」


強く、床を叩いた―――。




< 240 / 300 >

この作品をシェア

pagetop