− 夏色模様 −
本当に、誰だってそうなんだろうか?
友達――― 自分の好きな人が、自分の声を聞き取ってもらえないんだぞ!
そんな現実を簡単に受け入れられるヤツなんて…… 本当にいるんかよ。
「なあ、捺稀。 俺、正直…… 木下先輩に会うのが怖い」
ひどいことも言った。 でも、俺の声を聞き取ってもらえないんじゃないか――― そんな不安がある。
「俺…… どうしたらいいんだよっ」
木下先輩は好きだ。 それは、今も変わらぬ想い。
でも“好き”には、二通りの意味がある。
恋愛感情の“好き”
先輩としての“好き”
木下先輩の耳のことを知る前は、確実に前者であった。
だか、しかし…… 耳のことを知った今。
俺の本当の気持ちは“前者”なのか…… それとも“後者”なのか……。
「――― っくそ!」
強く、床を叩いた―――。