− 夏色模様 −




最初に口を開いたのは…… 桐谷先輩だった。


「まおちゃんと、樹は小学校が一緒だったらしい」


「…… はい」


遠くの海を見つめながら、桐谷先輩が話し出す。


「でも、低学年の頃に樹が引越しして、高校入学を機にまたまおちゃんの家の近くに戻ってきたんだ」


へー、あの二人ってずっと一緒だったわけじゃないんだ。


仮にも“思春期”の男女。

なのに、あんなに仲がいいのは……。


「まおちゃんって小さい頃から体が弱くて、それを知っている樹は何かと面倒みてるんだ。 樹の中では過去の病気がちだったまおちゃんが抜けきれないらしい」


「……」


「家族ぐるみであの二人は仲がいいんだよなー。 樹なんて、月に何回かまおちゃんん家で夕飯を食っているんだって」


少しだけ、あの二人の仲がいい理由が納得できる。


家族ぐるみだったら必然的に顔を合わせる機会が増える。




< 242 / 300 >

この作品をシェア

pagetop