− 夏色模様 −
「まおちゃんはゼンソク持ちだから、部屋で樹と一緒にいる。 だから、今日は会えないと思う」
「そう、ですか……」
さっき、桐谷先輩から“木下先輩は、体が弱い―――”
そう聞かされた。 だから、花火に参加出来ないのも納得できた。 できたけど……。
「どっちの、部屋…… ですか?」
「まおちゃんの部屋だ」
部屋に二人っきり。 互いに想い合っている二人だそ?
全員外にいて、旅館では二人きり……。
「安心しろ。 樹はまおちゃんにそんなことしない」
だよな……。 前田先輩が、そんな事、しないよな。
「明日ならバスに乗る前に少し時間があるはずだ」
「わかりました」
時間は取れるらしい。
俺のこの気持ちだけは、ちゃんと伝えなくては……。