− 夏色模様 −
なんとなく…… 一人になりたくて、こっそり旅館に戻る。
誰もいない…… 人がほとんどいない旅館は、静かだ。
冷たい飲み物でも買おうと思い、自販機に向かって足を進めた。
「……」
「……」
先客がいた。 向こうも俺に気付き、少し考えるような表情をした。
「どうもっス」
「今は庭で“花火”だろ? こんなとこで何やっているんだ?」
「ちょっと一人になりたくて」
「ふーん」
前田先輩は、ペットボトルのキャップを開け口に含んだ。
俺も自販機で飲み物を買った。
「ちょっと話せるか?」
「…… はい、大丈夫です」
前田先輩から声を掛けてくれるなんて思っていなかった。
「じゃあ、ちょっと座って話すか……」