− 夏色模様 −
木下先輩は木下先輩で、前田先輩を中心に回っているみたいだし……。
「でも、まおが不安に思ったことは、俺も同じように不安だった」
そのセリフは、いつもの前田先輩から感じられない、弱いセリフ。
「俺はまおと再会した高1ん時、まおに恋…… したんだ」
あぁ、そっか。 小学生の時に前田先輩は、転校したんか。 高校入学を機にまた戻って来たって…… 桐谷先輩が言っていた。
「まおと同じように、俺もまおと同じ考えだ。 恋人になったら、壊れた時が怖い」
恋は儚く、脆い。
一度壊れたものを、修復するのに時間を要するが、完璧に直ることは無い―――。
二人とも、それが分かっているから、一歩踏み出せないでいるんだ……。
「これが、俺とまおが付き合わない…… 恋人同士にならない理由だ」
「はい、ありがとうございます」