− 夏色模様 −




適度な距離が、俺らの間には存在する。

だか、しかし。 恐怖からか、後ろに下がっていく。


――― コツンッ。

背中が、壁に当たった。



「まおがお前たちに耳が聞こえなくて、迷惑かけたか?」


「かけてないです」


「まおがケガしたか?」


「してないです」


今まで感じたことの無い感覚に、手から飲み物が落ちた。

鈍い音が聞こえたが、今はそんなもの。 構っている余裕が無い。


「つーか、まおの耳なんてお前に関係ねーじゃん。 なんで、わざわざ聞くわけ?
…… “障害者”とか思ったんじゃねーのッ?」


「――― !!」


ドキッとした。


俺が考えたことを見事に的中させた前田先輩。


もう後が無いと分かっていながらも、足は前田先輩から離れようとする。


「――― チッッ!」




< 257 / 300 >

この作品をシェア

pagetop