− 夏色模様 −
適度な距離が、俺らの間には存在する。
だか、しかし。 恐怖からか、後ろに下がっていく。
――― コツンッ。
背中が、壁に当たった。
「まおがお前たちに耳が聞こえなくて、迷惑かけたか?」
「かけてないです」
「まおがケガしたか?」
「してないです」
今まで感じたことの無い感覚に、手から飲み物が落ちた。
鈍い音が聞こえたが、今はそんなもの。 構っている余裕が無い。
「つーか、まおの耳なんてお前に関係ねーじゃん。 なんで、わざわざ聞くわけ?
…… “障害者”とか思ったんじゃねーのッ?」
「――― !!」
ドキッとした。
俺が考えたことを見事に的中させた前田先輩。
もう後が無いと分かっていながらも、足は前田先輩から離れようとする。
「――― チッッ!」