− 夏色模様 −
3日目⇒ 彼女の笑顔の秘密。
「まお、はね……」
愛川先輩が、ゆっくり話し始めた。
それは、俺が知らなかった木下先輩の“過去”だった……。
「まおはね、高校1年生の2月に聴力が下がっちゃったの。
春休み中、ずっと治療していたんだけど…… 進級して、疲れたのかな? せっかく戻りかけた聴力が、下がって入院したの」
“うんうん”と、頷きながら桐谷先輩も愛川先輩の話しに耳を傾けている。
「まおって意地っ張り…… と言うか、頑固な性格って言った方が正しいのかな? 前田くんに、自分が“耳が聞こえない―――” って、話さなかったの」
それは、以外だった。 絶対、木下先輩は前田先輩に相談しているって思っていた。
誰よりも近くにいる前田先輩だ。
木下先輩の一番の理解者のはずなのに……。
「まおは、怖かったの。 “耳が聞こえない”って前田くんに言った時、前田くんが“離れる”んじゃないかって」