− 夏色模様 −
――― あっ!
さっき、俺が前田先輩に言われたあの言葉って、もしかして。
「まおは、今。 あんな風に笑っているけど…… 本当に治療期間中は、見ているこっちが目を背きたくなる程の治療をしていて、毎日しんどそうな顔していたの」
俺が知っているのは、今の笑顔の木下先輩。
そんな治療期間中の木下先輩は、知らない。
「でも、前田くんはずっとまおのそばにいたの。 誰よりも早く、まおの行く先ざきを調べ、まおの安全のために動いていた。 登下校なんか、さりげなくまおの時間に合わせたりとか……」
前田先輩なら、やりそうだな。
俺に、前田先輩のような立ち回りが出来るかどうかなんて、決まっている。
出来るはずがない。
「俺…… マジで好きだったんです」
声を絞りだし、二人に俺の想いを伝える。