− 夏色模様 −
俺は“無知”だった。
調べもしないで、二人の会話から勝手に想像しただけして…… それが、前田先輩を怒りに導いた。
「分かったなら、それでいいんだ」
「すいませんでした」
「謝る相手が違うだろ? 西村。 明日、樹に謝っとけよ」
「…… はい」
誰よりもそばで木下先輩を支えてきた前田先輩だから、俺の考えが気に食わなかったんだ。
俺の軽率な考えが、全てもの原因だ。
明日…… 前田先輩に謝ろう。
そして、木下先輩にも謝ろう。
傷付けた――― その事実は、変わらない。
でも、謝ることから始めていこうと思う。
「桐谷先輩、愛川先輩」
俺は二人を見上げた。
「ありがとうございます―――」
最上級の感謝の気持ちを込めて、二人に伝えた。