− 夏色模様 −
昨夜、桐谷先輩と愛川先輩から教えてもらった木下先輩のこと。
俺が“無知”だったこと。
「本当に――― すいませんでした!」
謝って足りるものではない。
何度謝っても、俺は許されないことをしたんだ。
“許してもらおう”だなんて、甘い考えは持っていない。
ただ、今は…… “誠意”を伝えたかった。
「もう、いいって。 頭、上げろ」
「――― えっ?」
それは、頭上から聞こえてきた。
ゆっくり頭を持ち上げた。
「俺も、昨日はやり過ぎた。 …… 悪かった」
「俺が、悪いんです」
前田先輩は、何も悪くない。 俺が軽率だっただけだ。
「今、庭にいる」
庭? 誰が?
「10分、時間をやる。 きちんと、アイツとも話してこい」
誰を示しているのか分かったから。
「ありがとうございます」
深々と、頭を下げた。