− 夏色模様 −
俺を助けてくれたのを覚えていないなら、それはそれでいい。
今、俺が伝えたいのは……。
「木下先輩を“先輩”として――― 好き、です」
俺は、先輩として木下先輩を好きだったんだ。
それを、恋と間違えていた。
…… 気付くのが、遅かったんだ。
「…… ありがとう」
「えっ?」
思ってもいなかった答えが飛んできて――― 逆に俺が、驚いた。
「ずっと、あたしを思っていてくれたんだね……」
少し恥ずかしがりながらも、木下先輩が言葉にしてくれた。
「えーっと……」
「西村です」
「そうそう、西村くんっ!」
俺…… 名前も覚えてもらえなかったのか。
それは、それでショックだ。
「あたし…… ずっと、いっくんが好きなの」
足先を見つめて、“気付いたのは遅かったけどね”と言って、笑った。