− 夏色模様 −




俺を助けてくれたのを覚えていないなら、それはそれでいい。

今、俺が伝えたいのは……。


「木下先輩を“先輩”として――― 好き、です」


俺は、先輩として木下先輩を好きだったんだ。

それを、恋と間違えていた。


…… 気付くのが、遅かったんだ。



「…… ありがとう」


「えっ?」


思ってもいなかった答えが飛んできて――― 逆に俺が、驚いた。


「ずっと、あたしを思っていてくれたんだね……」


少し恥ずかしがりながらも、木下先輩が言葉にしてくれた。


「えーっと……」


「西村です」


「そうそう、西村くんっ!」


俺…… 名前も覚えてもらえなかったのか。

それは、それでショックだ。


「あたし…… ずっと、いっくんが好きなの」


足先を見つめて、“気付いたのは遅かったけどね”と言って、笑った。




< 271 / 300 >

この作品をシェア

pagetop