− 夏色模様 −




「いっくんってね、ああ見えて、結構優しかったりもするの。 あたしにはよく、意地悪するけどね……」


呆れるように笑いながらも、なんだか嬉しそうに笑っている。


「でもね…… いっくんは、あたしをいつも正しい道に導いてくれる―――」


「正しい道?」


「ダメなことは“イケない”って、ちゃんと怒ってくれるの。

あたし、すぐに言い返したりして二人で小さなケンカとかしょっちゅうだけど…… いっくんの言っていることは、いつも正しい」


ケンカするほど仲がいいって言うくらいだ。

お互いが、ちゃんと理解しあっているんだろうな。


「あたしさ、体弱いクセに無理ばっかりするから、いつもいっくんに怒られちゃう」


「……」


「自分の出来ることと、出来ないことが、この歳になっても理解していないのが原因なんだよね。 だから、しょっちゅう回りに迷惑ばかり掛ける……」




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