− 夏色模様 −
あー、それは…… すいません。 前田先輩が戻って来ない理由って、俺が木下先輩と話しているからです。
「あのね、帰りのバスの中で飲めるように“いちご・オレ買ってきてやるから”って言ったのはいっくんなんだよ? どーせどこかで、遊んでいるんだ!」
「じゃあ、俺が変わりに“いちご・オレ”買ってきましょうか?」
「ううん、いいよ。 いっくんに買ってこさせるから!
あっ! 西村くんの分のやつも頼んで……」
「ちゃんと買ってきたし」
後ろから言葉を遮った人物…… 前田先輩だ!
後ろを振り向いて、木下先輩が頬を膨らませた。
「おっそーい!」
「しゃーねーだろ? 自販機が混んでいたんだから」
それはもちろん、嘘。 俺との時間を作ってくれていたんだ。
それを知らない木下先輩はぷりぷり怒っている。