− 夏色模様 −




でも、まおの前だけでは一瞬で崩れる――― 壁。


「でも、決めるのはまおちゃんだ」


“まおちゃん”

桐谷は、またまおを“まおちゃん”と呼ぶ。


「愛川……。 大丈夫だ」


何が大丈夫なの?

どうしてあたしを“優”って呼んでくれないの?


あたしは桐谷を“陽太”って、呼んじゃダメなの?


「桐谷……」


体を動かして、桐谷と向き合った。


「愛川、どうした?」


あたしの顔を覗き込むように桐谷がヒザを折った。


「桐谷――― 好き」


桐谷……。 好きだよ。

ねえ、あたしの気持ち。 届いている?


「桐谷?」


「珍しく可愛いこと言うじゃん」


桐谷と目を合わすと……。 桐谷が三日月のように目を細めて笑っていた。


「桐谷―――。 好き」


「知っているから」




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