− 夏色模様 −
「木下先輩っっ!」
遠く離れた、木下先輩を呼ぶ。
「さっきの“二人だけの秘密”ですから!」
「うんっ、ありがとう!」
あーあ、また前田先輩の機嫌損ねて……。
自分の言葉一つで、前田先輩を操っているって気づいていないのが、木下先輩らしい。
いつまでも、その笑顔を絶やさないでください―――。
「雄飛」
「なんだ、捺稀」
「そろそろ出発の時間じゃねーの?」
時間を確認する。
あと少しで、学校に戻らなくてはならない。
木下先輩と過ごす時間もあと少し。
「しっかりしろよっ、キャプテン!」
バシンッと捺稀に叩かれた。
力の加減ってものを知らないのか、背中がヒリヒリする。
ったく、絶対赤くなっているし。 ――― 最悪だ。
さて、恋に現(ウツツ)をを抜かしている場合じゃない。
キャプテンとして、気合いを入れなくては。