− 夏色模様 −




「相変わらずだねー、まおちゃん」


「学校と変わんねーよ」


「樹は、プライベートの方がまおちゃんを可愛がってるな」


…… そうか?

自覚したことはないが、学校とプライベートでは変わらないと思っていた。


「まおちゃんのために、ジャケットにタオルケット。 お前を好きな女子がみたら……」


そこまで言いかけて、陽太が笑い出した。


…… つーか、笑いすぎだし。

陽太が笑っている理由がなんとなく、わかるからムカつく。


「普段、優しくも無い、女子と関わらない。 こんな樹がまおちゃんの前だと変わるなんてな」


うっせーよっ。 まおは俺ん中で“特別”なんだよっ。

まおだけ“特別”


「いっくーん、開けてー」


ドアの向こう側。 まおが俺を呼ぶ。


「ほら、樹の“お姫さま”が呼んでいるぞ」


「まおは“お姫さま”なんかじゃねーよっ」


ただの、泣き虫でわがままなガキ。

でも、俺ん中では特別だから……。 やっぱり“お姫さま” なんだろうか?

言うならば……。


「“泣き虫なお姫さま” ってとこだな」



―― 泣き虫なお姫さま。
to be continued.




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