− 夏色模様 −




「ありがとう」


前田くんからお金を受け取って、自販機でお茶を買った。


「隣、座る?」


「あ、ありがとう……」


なんだか不思議な気分。 前田くんはまお以外、寄せ付けないのに……。


あたしたちは何も話さないで、ただ座っているだけ……。


でも、最初に口を開いたの―――。 前田くん。


「西村、何かまおについて言っていたか?」


「本気で狙っているみたいだよ」


「あっそう」


そう言って、一口。 前田くんはお茶を飲んだ。


今の前田くんは、不安で揺れている。

誰が見てもわかるくらい、不安でいっぱいなんだ。


「まおは何か言っていた?」


「西村はまだ、まおに接触はしてねーみたい。 何もまおが言わねーし、普通に寝てるし」


「……」


ちょっと待て。 “普通に寝てる”って……。 まおはいったいどこにいるの?

今って、自分の部屋にいるんじゃないの?




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