− 夏色模様 −




西村くんっっ!


練習中は、前髪を赤いゴムで縛り、髪を上げているのは……。 西村くん、ただ一人。


「あっ! この人だよ。 この人! タオルを庭まで運ぶときに少しだけ手伝ってくれたのー!」


まおが嬉しそうに報告してくれた。

でも……。 どうしてだろう。 なんだか、嫌な感じがする。


西村くんのその笑い方……。 タイミング良く、現れたこの感じ。


前田くんも何かに気付いたのか、まおの前に立ち、背中に隠した。



「えーっと……。 西村だっけ?」


「はいっ、そうですっ」


前田くんが白々しく、西村くんに声をかけた。


「西村くん、まおを手伝ってくれてサンキューな」


「いえいえ……。 ちょっと“忘れ物”をしたんでそれを取りに帰ったら、たまたま木下先輩が重そうなタオルを運んでいたら手伝っただけです」




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