− 夏色模様 −
「今夜……。 木下先輩のことは、待ってますから―――。
あと……。 愛川先輩も、桐谷先輩にちゃんと言った方がいいと思いますよ」
それだけ言い残して、西村くんは立ち去った。
残されたのは……。 あたしたち、4人だけ。
さっきの会話なら―――。 桐谷とまおに誤解を生ませる。
「あたしっ!」
前田くんの背中に隠されていたまおが声を上げた。
でも……。 どこか、無理をしている。
「あたしっ、平本先生の所に行ってくるね。 ごめん……。 あと、よろしく」
まおは走って、体育館から出ていった。
まおは絶対、勘違いしている。
今、早く誤解を解かないといけないのは――― まおだ。
「まっ……」
「まおっ!」
でも、やっぱりあたしは敵わない。
前田くんの方が先にまおの名前を呼んで、追い掛けた。
「愛川……」
最終的に残ったのは―――。 あたしと桐谷だけ。