− 夏色模様 −




「あっ、あのねっ!」


「俺に言いたいことって……。 何?」


あたしを見下ろす桐谷が……。 少し、怖い。

桐谷が……。 怒っている―――。


「西村には言えて、俺には言えねーわけ?」


「そんなんじゃ……。 無い」


「だったら言えよっ」


桐谷に“優”って、呼んでほしいって……。 こんな所で言うの?

人が……。 たくさんいるんだよ?


恥ずかしいじゃん―――。



「ちょっと、場所。 変える」


桐谷の裾を掴んだ。


「わかった―――。

しばらくの間、適当に練習ー」


部員たちに指示を出すことは、忘れない。 それが桐谷だ。


桐谷があたしの数歩前を歩いて、やって来た場所。

――― 体育館裏。


「んで―――。 俺に言いたいことって?」


立ち止まって、振り向いたと思ったら、さっそく本題に入った。




< 43 / 300 >

この作品をシェア

pagetop