− 夏色模様 −
「あっ、あのねっ!」
「俺に言いたいことって……。 何?」
あたしを見下ろす桐谷が……。 少し、怖い。
桐谷が……。 怒っている―――。
「西村には言えて、俺には言えねーわけ?」
「そんなんじゃ……。 無い」
「だったら言えよっ」
桐谷に“優”って、呼んでほしいって……。 こんな所で言うの?
人が……。 たくさんいるんだよ?
恥ずかしいじゃん―――。
「ちょっと、場所。 変える」
桐谷の裾を掴んだ。
「わかった―――。
しばらくの間、適当に練習ー」
部員たちに指示を出すことは、忘れない。 それが桐谷だ。
桐谷があたしの数歩前を歩いて、やって来た場所。
――― 体育館裏。
「んで―――。 俺に言いたいことって?」
立ち止まって、振り向いたと思ったら、さっそく本題に入った。