− 夏色模様 −




「愛川っ!」


「――― ッッ」


ねぇ、桐谷。 どうして、あたしを抱きしめるの?

桐谷の腕の中が温かすぎて――― 涙が出てくる。


「――― ッッ」


優しい腕の中。 あたしは、何度、収まっただろうか。

何度、その腕の中で“好き”だと思っただろうか。



「愛川……」


桐谷があたしの名を、優しく呼んでくれた。


「西村と…… 何があった?」


「……」


「話し、聞くから。 ちゃんと話してみ?」


あたし……。 話してもいいの?

桐谷に……。 全部、ぶつけてもいい?


「あたし……」


あたし、桐谷が好き。

前田くんがまおを想うように……。 あたしも、桐谷を想っている。


「それは、嬉しいな」


でも……。


「桐谷が好きなのは、まお―――。 なんでしょ?」




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