− 夏色模様 −
“まおちゃん? 好きに決まっているだろ?”
さっき、桐谷が言った言葉が、あたしを締め付ける。
「あー、まおちゃんね」
ほらっ、そうやって“まお”を“まおちゃん”って、呼ぶ。
「そりゃ、好きに決まってんじゃん。 樹の好きな女の子だし……、愛川の大切な友達だろ? 嫌いになるわけねーじゃん」
桐谷は、そして……。 小さく付け加えた。
「まおちゃんって、なんだか“妹”みたいで、可愛がりたくなるんだよな」
まおが――― 妹?
あたしの疑問を感じ取ったのか、桐谷が言葉を続ける。
「ほら、まおちゃんってさ……。 俺を“陽太くん”って、呼んでくれんだろ? なんだか、俺からしたらまおちゃんは小さいし、頭撫でると喜ぶし……。 どーも、タメには見えねーんだよ」
あー。 確かに、まおって嬉しいことがあると。 ほんっとーに、嬉しそうに話してくれる。
その姿は、高校生には全く見えない。