− 夏色模様 −




“まおちゃん? 好きに決まっているだろ?”


さっき、桐谷が言った言葉が、あたしを締め付ける。


「あー、まおちゃんね」


ほらっ、そうやって“まお”を“まおちゃん”って、呼ぶ。


「そりゃ、好きに決まってんじゃん。 樹の好きな女の子だし……、愛川の大切な友達だろ? 嫌いになるわけねーじゃん」


桐谷は、そして……。 小さく付け加えた。


「まおちゃんって、なんだか“妹”みたいで、可愛がりたくなるんだよな」


まおが――― 妹?

あたしの疑問を感じ取ったのか、桐谷が言葉を続ける。


「ほら、まおちゃんってさ……。 俺を“陽太くん”って、呼んでくれんだろ? なんだか、俺からしたらまおちゃんは小さいし、頭撫でると喜ぶし……。 どーも、タメには見えねーんだよ」


あー。 確かに、まおって嬉しいことがあると。 ほんっとーに、嬉しそうに話してくれる。

その姿は、高校生には全く見えない。




< 47 / 300 >

この作品をシェア

pagetop