− 夏色模様 −




優って呼ばれることが、こんなにも嬉しいことだなんて―――。 桐谷に呼ばれるまで知らなかった。


桐谷と付き合いはじめてから、あたしはたくさんの初めてを経験した。


「優?」


「ん、なに?」


「“陽太”って、呼んでみ?」


「――― ッッ」


あたしも、桐谷を“――― 陽太”って呼んでいいの?

まおが呼んでいるように……。 “陽太”って、よんでいいの?



「優が呼んでもらいたかったように、俺も優に名前で呼んでほしい」


「――― 陽太」


目を細めて、口角が上がって……。 嬉しそうに、笑ってくれた―――。


桐谷……。 陽太も、あたしにずっと名前で呼んで欲しかったのかな?


そうだったら……。 嬉しいな……。




< 51 / 300 >

この作品をシェア

pagetop