− 夏色模様 −
優って呼ばれることが、こんなにも嬉しいことだなんて―――。 桐谷に呼ばれるまで知らなかった。
桐谷と付き合いはじめてから、あたしはたくさんの初めてを経験した。
「優?」
「ん、なに?」
「“陽太”って、呼んでみ?」
「――― ッッ」
あたしも、桐谷を“――― 陽太”って呼んでいいの?
まおが呼んでいるように……。 “陽太”って、よんでいいの?
「優が呼んでもらいたかったように、俺も優に名前で呼んでほしい」
「――― 陽太」
目を細めて、口角が上がって……。 嬉しそうに、笑ってくれた―――。
桐谷……。 陽太も、あたしにずっと名前で呼んで欲しかったのかな?
そうだったら……。 嬉しいな……。