− 夏色模様 −




綺麗な弧を描いて――― 吸い込まれるように、ボールはゴールに収まった。


「“約束”覚えているよな?」


「えっ、何のことだろう?」


「とぼけるなッッ!!」


つい、数分前のこと。

忘れるはずが無い。


あんな約束なんてしなきゃよかった……。




「まお、こっちこい」


いっくんから少し離れたところに立っていたあたしを呼ぶ。


ゆっくり、近づいた。


「ほら、ボール持って……。 それで、前に出て」


ずっしり重いボールがあたしの手に収まる。


「いいか、まお? ちゃんと前を見て、力なんて入れずに手から優しく放してみ?」


「――― !」


いっくんの腕が、後ろから回ってきた。

バスケを教えるためなんだろうけど……。


「いっ、いっくん!」


なぜか、後ろから抱きしめられた。




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