夜獣3-Sleeping Land-
しかし、渚が不調なのには、何かの理由がある。

それは解らないが、今後の能力者探しには大きなロスが生まれる事は間違いない。

「まあ、いい」

渚を利用するべきところは、そこだけではない。

大きなところでいえば、人脈。

「いいご身分よね」

傍には、桜子がいる。

先ほどの雪坂の行動を見て、気付いたのか。

「お姉ちゃんの事も忘れて、雪坂さんとデート?ほんと、チグハグな事言うあんたみたいな男には呆れるわ!」

桜子は、僕を見つけるたびに怒りを沸き立たせる。

僕が『奴』を追い求める姿勢も、こうなのだろうか。

「復讐なんかやめて、雪坂さんと幸せに暮らせば!?」

「お前は、学校生活でも送っていろ」

「何、すかしてんのよ!この馬鹿!」

グラスの中に残った溶けかけの抹茶パフェを僕にぶっかけて、店から出て行った。

松任谷は僕を一瞥して、桜子の後を追いかける。

「不味いな」

「耕一さん、どうなさったんですか!?」

鼻血が止まっている渚が席へと戻ってきた。

頭から自分の抹茶パフェがふりかけられていたら、驚くのも無理は無い。

「何でもない。それより、どうだ?」

「ええ、微かながらに、能力者の気配を感じました」

「そうか」

これで、また一歩進む事が出来る。

「渚、松任谷真理について、調べろ」

能力は解らないにせよ、相手の情報を持っていて損はない。

「それは構いませんが、頭を洗ってきたほうがいいと思います」

「そうだな」

僕は、渚とは入れ違いにトイレへと向った。
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