夜獣3-Sleeping Land-
トイレから帰参すると、渚は窓外の景色を眺めていた。

僕に気付いて、起立する。

「行きましょうか」

「お前、まだ食い終わってないだろう」

「でも」

「食っていけ。今日はもうやる事はない」

鼻血を出血した時、食べて間もなかった。

渚が連れて来た店で、満足する事なく帰るというのはおかしな話だ。

それに、今日の鍛錬は一通り済ましている。

「ありがとうございます」

本人も物足りなさを感じていたのか。

笑顔になって着席する。

再び抹茶パフェが到着してしばらく経った頃だ。

遠方から救急車のサイレンが、聞こえてくる。

松任谷が何かを起こしたのかとも思ったが、桜子と共にいて行動を起こすか?

事故かなにかだろう。

松任谷真理。

運動が出来るタイプには見えない。

桜子と何らかの関わりがある。

しかし、自身の欠点を補填した能力を持っているのかもしれない。

どんな能力を持っているのかが、楽しみだ。

「ふん」

多分、桜子の邪魔が入るのは避けられないだろう。

邪魔をするのなら、動けなくするまでだ。

「耕一さんも、お食べになりますか?」

抹茶パフェの中の白玉を一掬いし、アピールする。

「必要ない」

「美味しいですよ?」

「なら、一人で完食しろ」

「残念です」

そのまま、自分の口に運んで吟味する。

完食した時には夜の帳がおり、外界は街灯を灯し始めていた。
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