夜獣3-Sleeping Land-
どこに行ったのかは知らない。

だが、近い事は確かだ。

渚に電話をかけてみる。

コールが何度も響き渡り、出たのは男の声だ。

『神崎耕一か?』

「そうだ」

『雪坂渚は俺達とお楽しみ中だよ』

「そうか」

『残念だったな』

「そうだな」

『お前は目立ちすぎたんだよ。神崎』

電話の向こうの男の声は息が荒い。

他の男の声も聞こえてくるのは、傍に数人いるという事か。

『耕一、さん』

電話の向こう側から、息の荒い渚の声が聞こえてきた。

「ミスはするなと言っただろう」

『ごめん、なさい』

「必要ない」

『女が大切なら見つけてみせろよ。その時には遅いだろうけどな』

電話が切れた。

狂気に支配された世界は変わらない。

「何をしている?」

傍には、見覚えのある車が止まっている。

顔を覗かせたのは相場だ。

実家から帰ってきたのか。

「渚がさらわれた」

鬼の形相になりながら、相場が車から降りてくる。

「あれほど問題を起こすなと言った。お前に五体満足でいる資格はない」

「やるのなら受けて立つ。だが、のんびりしている暇があるのか?」

「く」

顔を歪ませながら、車に乗り込む。

僕も後部座席へと座った。
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