夜獣3-Sleeping Land-
他の能力者もそうだ。

渚を連れて、街を歩いていても見つかりはしなかった。

焦りがないといえば嘘になる。

焦れば焦るほど遠のく事もあると、思っているのも事実。

海江田や甘粕も、自分で見つけたわけではない。

あの二人は、偶然だった。

そんな日々の中で、自分を高める鍛錬は怠ってはいない。

一日でも怠れば、僕の拳と憎悪は『奴』には届かなくなる。

海江田の件があって、道場へ通えなくなった。

今は渚の家の庭で、一人で型に取り組んでいる事がほとんどだ。

しかし、一人で型をする以外にも鍛錬の方法はあった。

アキラは記憶を失ったが、能力を使える。

気分の良い時は、鍛錬につき合わせている。

鍛錬の内容は、アキラに野球の硬球を投げてもらい、避ける事。

避けるついでに、ボールに描かれた数字を当てるという事だ。

しかし、成功したのはゼロから数えた方が早い。

避ける事もままならず、身体は痣だらけだ。

「ふう」

午後十六時。

鍛錬を止め、渚を迎えに行くため用意をする。

渚は相変わらず学校へ通っている。

迎え役の相場は実家に用事があるらしく、里帰りだ。

数日は家を空けており、迎えにいけない。

実家に戻る際に、僕に一言言う。

『渚に何かあってみろ、五体満足では済まさない』

脅迫紛いではあるが、相場を恐れる僕ではない。

本来ならば、僕が迎えに行く必要はない。

しかし、能力者を探す事も怠ってはならない。

だからこそ、学校帰りの渚をさらい、街へ向うのだ。
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