夜獣3-Sleeping Land-
「耕一さん、縛りを解いていただけませんか?」

懇願の視線で訴える。

「今のお前を信用しろというのか?」

「私は、大丈夫です」

「能力者を殺すまでは、ベッドの上で休んでいろ」

今の渚の言葉は信用しない。

目の前にある文面も本物かどうかすら怪しくなってきた。

もう一度、文面を眺めようとすると、微かな違和感を脳が訴える。

僕は渚を見た。

過去の渚の発言に違和感を感じる。

渚を脅迫した男の事を苗字の呼び捨てではなく、『彼』と呼んでいた。

罠に落としいれようとしていた人間の事を『彼』などという言葉を使うだろうか。

そして、男を守ろうとした姿勢。

怪しさが加速する。

答えを見誤るな。

過去に一度、見誤った事により夕子は死んだ。

「夕子」

薄れかかっていた怒りと憎しみが、浮かび上がってくる。

「確実に、始末する」

嫌な気分を思い出すと同時に、始末する相手を決める。

「相場」

名前を呼ぶと部屋の中へと相場が入ってきた。

「渚に何をしている!」

紐を解くために近づこうとしたが、遮った。

「協力しろ」
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