夜獣3-Sleeping Land-
「私は、夕子さんじゃないんです」

「解っている」

「ならば、何故、私を欲するのですか？」

僕は、言葉につまった。

自分自身の問いに、答えられていなかったからだ。

「私は、夕子さんの代わりにはなれません。ですから、解放してください」

夕子の代わりだから、渚を置いているなどという事は一度たりともなかった。

僕は、夕子の復讐のためだけに生きている。

渚にこだわる理由は何度となく自分の中で言い聞かせていたつもりだ。

協力者、利益を生む者。

それが正しいと、思っている。

だが、何故、答えられなかった？

簡単に答えられる答えだ。

揺らぐな。

揺らぎは全てを失う。

「渚」

背後から現れたのは相場と制服を着た松任谷真理だ。

やはり、松任谷は能力者で間違いではなかった。

能力開眼の時期を考えれば、松任谷がレイプにあったというのも、嘘ではないのかもしれない。

「帰らせてもらいます」

松任谷は僕の顔を見るなり嫌悪感を示し、部屋を出ようとする。

「頼む。時間がないんだ」

しかし、相場が道を塞ぐ。

「彼は桜子を傷つけました。それなのに、何故、私が彼の友人を救わなければならないのですか？」

「その事については、私が謝罪する。どうか、頼む。渚を救ってくれ」

松任谷は相馬の頭を見つめていたが、僕に視線を移す。
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