夜獣3-Sleeping Land-
「渚ちゃんを迎えに行くの?」

玄関で靴を履いている途中、アキラから声がかかる。

「ああ」

「お熱だねえ」

「勘違いするな」

訂正しようと思ったが言うのをやめた。

夕子や復讐の事を言っても、何かが変わるわけではない。

「何?」

僕がアキラを見ていると、不思議に思ったアキラが聞き返してくる。

「何でもない」

「はあ、本当にあんたが弟だったんかねえ」

僕の態度を見れば、疑いたくもなる気持ちは解らなくはない。

「どうだかな」

アキラの顔から視線を玄関に視線を移し、家を出た。

学校まで走って向う。

途中、虚ろな目をした男が僕の横を通っていった。

茶髪で身長は百八十はあるだろう。

スーツを着こなし方からして、ホストだろうか。

止まって振り返ってみると、男は姿を消していた。

曲がり角でも曲がったんだろう。

学校まで、三分程度。

渚をさらうために、再び走り始める。

三分ジャストで夕焼けの学校に辿り着いた。

学校の校門から、若さに溢れた人間達が笑顔で出てくる。

今を楽しんでいるのだろう。

「夕子」

呟いてみたが、彼女が出てくる気配はない。

胸に押し寄せる憎悪が、膨れ上がった。
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