夜獣3-Sleeping Land-
しばらく、時間が経った。

黙っていた松任谷は言葉を発す。

「解りました」

僕は頭を上げる。

「能力を使うかわりに、条件があります」

「何だ?」

「あなたは町から出て行くこと。それだけです」

どうする?

条件を飲めば、渚は助かる。

だが、今まで以上に自由はきかない。

それを、捨てられるか?

「解った」

捨てざるを得ない。

今の渚のままでいさせたところで、土地からいられなくなるだけだ。

「町にいる以上、桜子に出会う事になります。あなたが消えれば、桜子は悲しむ事はなくなります」

「それでいい」

松任谷は鞄を下ろし、縛られた渚の前に座る。

「私はあなたがどうなろうと知った事ではないです。でも、私にとってあなたが治る事は利益が大きい。だから、治します」

「何度も言いますが、私は正常です」

「正常かどうかは私が決めます」

松任谷は懐からナイフを取り出し、掌を切る。

そして、自分の血を含み、渚に口付けで強制的に血を飲ませた。

松任谷と渚の口は紅く染まる。

過去に渚も同じ事をやってのけた。

だが、今から起こる事は別だ。

そして、すでに症状は現れていた。
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