夜獣3-Sleeping Land-
渚の瞳は焦点があっていない。

「どうするつもりだ?」

相場が二人の様子を伺う。

「催眠を解く際に、彼女を通して二次感染の催眠をかけてくる可能性があるのかどうかを調べます。その後に、彼女の催眠を強制的に解除します」

敵の前に渚を出すよりは手っ取り早い。

目を見つめ続け、渚の中身を伺っている。

「この催眠のかけかたは、少しかじっただけの人ですね」

次々に進めていき、数分後に松任谷が息を吐いた。

「自分の利益のためにしか催眠を使用しないやり方、本当に醜い、ですね」

もう一度、口の血を含み、渚と口付けを交わす。

糸を引きながら、松任谷は口を離した。

「終わりました」

松任谷は口元をハンカチで拭き、立ち上がる。

渚の目の焦点も、定まっているようだ。

「渚?」

相場がゆっくりと、渚に近づいていく。

「あ、の、どうかしましたか?」

本人は何が起こっているのか、解らない状況だ。

「何ともないのか?」

「くしゅん、何で私は裸なのですか?」

記憶がないのか。

「強制的に排除するというのは」

「彼女の頭の中身を催眠をかけられる前の状態に戻しただけです。だから、今まで起こった記憶もなくなったんですよ」

ならば、状況などは丸っきり理解していないわけか。

「神崎さん、約束は守って下さい」

「ああ」

松任谷は何事もなく、鞄を持って退出した。
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