夜獣3-Sleeping Land-
周囲の学生が、僕の事を見る。

校門前に不審者がいれば当然か。

その中で、眉を逆八の字にした女生徒が近づいてきた。

夕子の妹である、桜子だ。

髪が伸びているようで、ポニーテールにしている。

「あんたに、聞きたい事があるの」

鬼の形相で睨みつける桜子は、僕の事が気に入らないらしい。

「アキラさん、どこにやったの!?」

桜子には、アキラの情報は行き届いてないのか。

渚は、話していないのだろう。

桜子に知られれば、更に面倒になるのは目に見えている。

「あいつの事は、知らない」

「嘘!あんたはアキラさんと関わりを持ってた!白状しなさいよ!」

怒りは収まらないらしい。

身近にいたアキラの事で、『奴』の事を調べるのは後回しになっているといったところか。

「あらぬ疑いをかけるな」

「雪坂さんは、何も言ってくれない。何で耕一まで何も話してくれないの?ねえ!アキラさんは、どうなってるのよ!?」

悔し涙なのか、涙腺が弱いのか。

瞳には涙が溢れてきている。

「教えてよ、お願いだから」

教える事は出来なかった。

桜子が真相を知れば、渚の警察への手回しが無駄になる。

どこかへ、情報をこぼさないとは限らないからだ。

「やだよ。皆、いなくなっちゃうよ」

泣き崩れていく中、傍に寄ってきたのは同じ学年の女生徒だった。

黒い三つ編みに気弱そうな顔立ちではあるが、今の状況で近寄ってこれるのは勇気がある。
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