夜獣3-Sleeping Land-
「桜子、大丈夫?」

「真理」

真理という女生徒は泣いている桜子にハンカチを渡す。

「ありがとう」

涙を拭いて、桜子が立ち上がる。

「桜子を泣かせたのは、あなたですか?」

真理は怒りに満ちた目で僕を見ている。

「ああ」

「あなたと桜子との間に何があるのかは知りません。でも、泣かせるのは、酷いんじゃないですか?」

僕は答えない。

「何とか、言ったらどうなんですか?」

「いいよ」

一方的に問いかける真理を制したのは、桜子だ。

「真理の気持ち、嬉しいよ。ありがとう」

涙をハンカチで拭い、笑顔になった。

「今日さ、街に美味いパフェの店があるって聞いたんだ。驕るから、食べに行こうよ」

「いいの?」

「いいの、行くよ」

桜子は僕を見る事無く、真理の背中を押して街の方角へ向っていった。

関わりを持たない事が、一番だ。

周りの人の目は、先ほどよりも悪い物に変化している。

関係ない。

「遅くなってすいません」

しばらくして出てきたのは、渚である。

「構わない」

「学校まで、ご足労いただきありがとうございます」

「相場にもそんな事を言っているのか?」

「ええ」

常に敬い続ける姿勢は、疲れないのか。
< 6 / 118 >

この作品をシェア

pagetop