夜獣3-Sleeping Land-
ご飯を食べ終え、軽く筋トレしておく。

渚は鼻歌を歌いながら、キッチンで食器を洗っていた。

筋トレだけは一日もかかさず行ってきた。

もう、限界まで到達しているかもしれない。

だが、止めるわけにはいかない。

乾を殺すその日まで。

「耕一さん」

洗い物を終えた渚が皿にリンゴを乗せて持ってくる。

リンゴはウサギの形をしている。

「おいしいですよ」

「もらっておく」

形がウサギでも本質はリンゴだ。

味は変わらない。

渚もリンゴを食べながら、微笑んでいる。

「耕一さん」

「何だ?」

一転して、渚の表情が真剣になっている。

「デザイアが来たという事は、星に帰る手がかりがあるという事、です」

渚の宇宙船はすでに壊れている。

「私は、どうすれば、いいんでしょうか?」

以前、渚は星へ帰られる状況が出来たのなら、帰るかもしれないといっていた。

それは本心だ。

僕にとって渚は必要な者だ。

だが、妨げるつもりもない。

帰りたければ、帰ればいい。

それだけだ。

それだけなのに。

心のどこかで手元においておきたいという願望もある。
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