夜獣3-Sleeping Land-
「帰りましょうか」

帰り道に足を進めようとしたところで、渚の肩を掴む。

「街へ行くぞ」

「能力者探しですか?」

渚は表情を変えない。

「ああ」

「耕一さんは、いつも熱心で感心します」

「お前ほどじゃない」

人の事より自分の熱心さに気付いてないのか。

年月で言えば、月とスッポンだろう。

「それでは、参りましょうか」

渚の都合はお構いなしで進むというのに、何ら変化を見せない。

本当に、嫌な事はないのか。

奥の奥に、隠し持っているのか。

悲しみの理由は解ったにしろ、謎が多い。

背中を見つめていると、渚は振り返る。

「耕一さん」

「何だ?」

「街に行くのは構いませんが、少し寄ってもらいたい場所があるんです」

「時間がかからないのなら、いい」

「大丈夫です」

僕の心を見透かしたかのような要望だ。

利用する代わりに、条件を出してきた。

「お前は、不思議な奴だ」

街へ歩いていく途中、口を付いて出た。

「そうですか?」

「お前はどうやって、ストレスを発散させている?」

嫌な事の無い生き方など、どこにもない。

どこかでストレスを発散しているはずだ。
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