夜獣3-Sleeping Land-
「死ぬかも、しれません」

扉付近に辿り着いたところで、渚が呟く。

「ああ」

「本来の目的は、どうするのですか?」

「やる。それ以外、ない」

「そうですか」

渚が僕の手を握る。

「必ず、叶えて下さい」

「言う必要のない事を、言うな」

僕は部屋から出て行く。

外は、雨が降っている。

全てを飲み込みそうなくらいの雨だ。

傘もささず、僕は歩いていく。

冷えて火傷の部分が癒される。

治療の意味がなくなったかもしれないが、治療を施した事で以前よりは動ける。

「よう、兄さん」

前方で一人の男から声がかけられる。

傘を差した事により、顔が隠れている。

しかし、誰かは声で見当がついた。

「まだ、やるんか?」

「まずは、お前からだ」

紅目になり、戦う準備を整える。

「しゃあないなあ。兄さんがそういうんなら、気の済むまでやったる。でも、やられたからって恨みはせんときや」

傘を投げ捨て、銃をこちらに向ける。

距離的には、明らかに不利。

だが、こちらも距離を伸ばせばいいだけの話だ。

怜という女は遠距離で発火させた。

遠方の空気を操る事が出来たという事だ。

ならば、空気爆弾の応用も不可能ではない。
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