夜獣3-Sleeping Land-
両脇に一軒家が並ぶ道路。

決して広くはない。

「チャンスはやらんで」

「必要、ない」

今の状態でニ撃も三撃も動けはしない。

相打ちになったとしても、一撃で勝負を決めるしかないのだ。

「終わりや」

白い空気の軌跡を想像する。

男まで、続いていくように。

男まで、届くように。

雨音だけが、周囲を包んでいた。

「はあ、はあ」

先ほどまで気持ちよかった雨も、次第に体温を奪い始めていた。

痛む体に割いていた意識を全て、爆弾が男を追いかける道を描くように集中させる。

感覚の中で雨の音が止み、無音の世界へと突入する。

時が止まったかのように思えた瞬間。

拳を放つのと同時に引き金を引いた。

僕はビームを回避する事が出来ず、心臓から少しずれた左部分を射抜かれる。

「ぐ」

爆弾はどうなったか。

白の空気が連弾で爆発しながら、男に向っている。

速さビームが僕に届いたのと同じくらいだ。

だからこそ、男も回避に遅れ、爆弾の餌食になり吹っ飛ばされる。

「はあ、はあ」

しかし、男は立ち上がった。

ダメージはあるようだが、立てるくらいか。

距離が開くと、威力が落ちるようになっているわけか。
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