夜獣3-Sleeping Land-
「矢を打っている時、ですかね」

「そうか」

最近、渚が弓を持っているところを見ていない。

学校で弓を引いているのか。

ちなみに、渚の家には弓道場はない。

「今日遅れたのも、少し、弓を引いてました」

遅れた事を気にしているのか、俯き加減だ。

「それくらいは好きにしろ」

「ありがとうございます」

笑顔になって、答える。

渚を見ている時間が長かったが、今気付いた事がある。

渚の髪は、真っ黒というよりは少し赤みがかった黒だった。

渚の星の者はどこかしら地球人とは変わった部分があるのか。

しかし、今の僕にはどうでもいい情報だ。

街に行き、渚の探索能力を用いて能力者を見つける。

欲しいのはそれだけだ。

街は、事件の起こった四ヶ月前と変わらない。

人々の記憶には残っているのだろうが、街に出ないわけにはいかないのだろう。

だからこそ、好都合というものだ。

人が多くいれば、能力者のいる確率が上がる。

「いるか?」

しばらく、渚が探ってみるものの、変化はない。

「いえ、いません」

「そうか」

今日も収穫はなし。

腕が鈍らなければいいのだが。

「行くぞ」

「ええ」

「ええ、じゃない。お前は自分の言った事も忘れたのか?寄りたい場所があるんだろう」
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