夜獣3-Sleeping Land-
王は、一歩、一歩、距離を縮めてくる。

男には人を抱えて走る力はもうないだろう。

一人ならば、逃げられるだろうがな。

「こりゃ、あかん」

「下らない事はいい。さっさと自分のやるべき事をやれ」

「俺が王と戦うんは地球を守りたいからや。地球を守るって事は人を守るって事に繋がる。ここでお前を見捨てたりしたら、俺の守る精神からはみ出る」

男は、自分の欲望のままに動いている。

自分の命を顧みず、守るという事もまた欲だ。

「本当に、必要の無い事をする」

能力を開眼させる。

「今すぐ、仲間を呼べ」

「それでも、時間がかかる」

「奴の距離を離す」

「やれるんか?」

「いいから、やれ」

あるべき物を全て使うしか、乗り切れられない。

男は携帯を使い、仲間を呼び始める。

「く」

立てないのなら、無理矢理立たせるしかない。

肘で地面にある白い空気を付き爆発させ、自分を立たせる。

「邪魔をするな」

前に倒れるのと同時に、拳を打ち出す。

距離にすれば、五メートル程度。

先ほどの男よりも近い。
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