夜獣3-Sleeping Land-
「でもよ、兄貴、あいつは」

怜は王を見る。

「あいつは、今のままでは倒されへん」

「でも、止まってる。チャンスじゃないのか?」

「何度も言わせんな。あいつの防御力は半端やない。準備が必要や」

「冷静になるんだ。ここでは、一つの選択のミスが死を招く」

男が孝二に肩を貸す。

「耕一さん」

渚に肩を借りて、何とか立つ。

まだ握っている状態だからこそ、動作は出来ない。

しかし、指の方が限界に近い。

今にも、跳ね返しそうだ。

「行きましょう」

動いた瞬間に、集中が切れる。

王が、動き始めた。

まるで、矢のダメージなどないかのように。

「はあ、はあ」

「行きましょう」

僕は、動けず、口も聞けず。

渚に連れられるままに、その場を去る。

背後にいる王は走らず、ゆっくりと近づいてくる。

三人も、逃げたようだ。

「耕一さん、無事で良かったです」

「はあ、はあ」

意識が朦朧とする。

今にも途切れてしまいそうだ。

「くそ」

僕は、まだ、何も倒していない。

奴等を、王を、必ず、倒さなければ、ならない。

血を流しすぎたのか、気を失ってしまう。
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