夜獣3-Sleeping Land-
「渚、お前は王の情報を持っているか?」

「少しだけなら」

「話せ」

「王は遠く離れた星に住んでいました。誰よりも強く、誰よりも優しい。そんな王だったと聞いています」

ならば、何故、石にして食べてしまうようになったのか。

「ですが、家臣の裏切りによって全ての物を失った王は、ただひとつの事を除いて何も信じなくなりました」

「それは何だ?」

「自分自身の力です」

石の能力か。

「信じた力だけが王自身を突き動かしました。信じた者も、信じていなかった者も全て飲み込み、自分の中に取り込みました。しかし、その衝動は止まりません。王は取り込むという行為に憑り付かれたかのように星をも取り込んでしまいました。そして、別の星へと旅立ち、その行為を繰り返したのです」

「何故、止められない?」

「王の力は絶大です。止めようとした者もいましたが、石にされ取り込まれてしまいました」

「ふん、この星も飲み込むつもりか」

「私の星はどちらかといえば、他の星よりも進んでいます。ですが、どの星よりも王から離れた位置に存在していました」

「だが、地球には近かったという事か」

「はい」

それで派遣されたのが、デザイアか。

「まるで、お前のような奴だ」

相場が一つ呟いた。

「何?」

「復讐に駆られたお前は誰も信じていない。そして、誰にでも牙を向く。ほぼ王と似ている」

「だから、何だ?」

「いつか、渚にも牙を向くかもしれない」
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